学会賞受賞のお知らせ

第22回日本疫学会 ポスター賞new


斉藤雅茂・近藤克則・尾島俊之・近藤尚己・市田行信・三澤仁平・平井寛 : まちづくりは高齢者の閉じこもりに効果があるのか;J-AGESプロジェクト

【背景と目的】2006年より進められた介護予防事業の成果が当初の期待を大きく下回り、健康の社会的決定要因を含む幅広い観点から自治体の介護予防政策の課題を検討することが求められている。本研究では、介護予防の重点課題の一つである「閉じこもり」について、自治体間での発現率の相違、および地域レベルの環境要因との関連を分析した。
【方法】日本老年学的評価研究(J-AGES)による横断データを用いた。2010年8月から2011年3月にかけて、全国27自治体において要介護認定を受けていない65歳以上の住民117,494名を対象にし、78,769名の有効回答を得ている。また、協力自治体について個別に新規要介護認定者割合や介護予防事業予算額、基本チェックリスト実施割合などの情報を収集した。外出頻度が週に1回程度以下を「閉じこもり」とし、自治体単位での相関・偏相関分析から閉じこもりの発現率と要介護認定率および個人・環境要素との関連を分析した。また、二段抽出モデルを用いて、高齢者個人の閉じこもりに関連する個人要因と環境要因を分析した。分析にはSPSS12.0JおよびMplus 5.0を使用した。
【結果】閉じこもり高齢者の発現率には大きな地域差があり(市町村単位:10.5〜49.8%、学区単位:4.3〜77.8%)、人口規模と高齢者割合を統制した上でも、市町村の閉じこもりの発現率と要介護認定者割合および新規要介護認定者割合との間に中等度から高度な相関関係(それぞれ.604、.408)が確認された。また、個人レベルにおいて、性別・年齢・健康度自己評価を統制した上でも貧困者ほど閉じこもりに該当しやすいだけでなく、貧困者が多い地域(p=.062)、近隣での交流(p=.013)や祭り(p=.005)が衰退していると感じる人が多い地域ほど高齢者が閉じこもりに至りやすいという結果が得られた。他方で、介護予防事業予算や基本チェックリスト実施者割合とは有意な関連が認められなかった。
【結論】健康な高齢者の閉じこもりの多さと自治体の要介護認定率の高さには一定の関連があり、個人への介入だけでなく、地域の貧困や交流の衰退といった環境要因に配慮したまちづくりが高齢者の閉じこもりの解消に寄与する可能性があることが示唆された。
発表ポスター
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